実は作家になりたかった。マクロン大統領の本棚

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フランスの新しい顔、エマニュエル・マクロン大統領。
お手並みについてはこれから拝見といった空気ですが、これまでの報道から感じるマクロン大統領の印象は、頭脳明晰、剛毅果断。また、斬新奇抜な政策であっといわせる面があるかと思えば、最適な旗揚げのタイミングを計ったり、なんとも絶妙なバランスの新内閣を組織する、深謀遠慮な面も持ち合わせた人物に見えます。
本棚から分かる人となり
ラテン語のことわざに、「君の読む書を言いたまえ。どんな人間かあててみせよう」というものがありますが、確かに本棚には、持ち主の思想が表れやすいものです。
では、マクロン大統領の本棚には、どんなものが並んでいるのでしょうか?
Business Insider Franceは、これまでのインタビューや、書斎の写真などから推し量り、マクロン大統領の本棚に並んでいるに違いない本8冊をまとめました。
挙げているのは、フランスの文豪Victor Hugo(ヴィクトル・ユーゴー)や、ノーベル文学賞を受賞したAndré Gide(アンドレ・ジッド)の小説、思想・哲学書、フランス政治家のインタビュー本、また日本の三木谷浩史の記したビジネスブックなどです。
作家を志した文学少年
実は、マクロン大統領は、相当な文学少年でありました。LObs 誌2月のインタビューによれば、16歳のころは作家になろうと固く決意していたほどだったそうです。小説や詩も密かに数本執筆していたのだとか。
好きな本を問うLe JDDのインタビューには、下のように答えています。
「難しい質問だな。スタンダールと同じくらいカミュも好きだし。ジッドと同じくらいランボーも気に入っている」
「Le JDD」から翻訳引用

それでも、一冊挙げるならと口にしたのが、René Char(ルネ・シャール)の詩選集『Fureur et Mystère(激情と神秘)』(1948)です。ルネ・シャールは第二次世界大戦中にレジスタンス運動家としても活動した詩人です。
Babelioに挙げられているルネ・シャールの引用には、生きる姿勢を示唆するものも並んでいます。
曰く、

「チャンスを課し、幸福を握りしめ、リスクへと向かえ。そういう君を目にすれば、周りの人間も慣れるだろう」
「われわれは不可能に到達することはできない。しかし、不可能は、われわれの灯(ともしび)になるのだ」
「Babelio」より翻訳引用
哲学を専攻した学生時代
また、Journal des femmesにも書いているように、マクロン大統領は、パリ・ナンテール大学では、哲学を専攻しました。修士課程とDEA課程で研究対象としたのは、Machiavelli(マキャヴェッリ)とHegel(ヘーゲル)。
マキャヴェッリと言えば、『君主論』。政治力学を分析してみせた書物です。
先週5月17日に発表されたばかりの新内閣づくりにも、その思想が応用されたのではないかと、つい想像したくなります。
20世紀を代表する思想家Paul Ricoeur(ポール・リクール)
ナンテール大学で哲学を修めたマクロン氏は、1999年から2001年にかけて20世紀を代表する思想家Paul Ricoeur(ポール・リクール)のアシスタントを務めました。
この経緯から、Business Insider Franceは、8冊のうちのひとつに、ポール・リクール著『Philosophie, éthique et politique(哲学、倫理学、政治学)』も挙げています。
ポール・リクールの言葉は難解なものが多いのですが、Citation du jourには、日常に当てはめやすく、なるほどと頷けるものも載っています。
曰く、
「我々の選挙制民主主義は、完全には、民衆の意を代表するものではない」
「今の世の中は、ますます豊かになっていっている。しかし、なぜ生きるのかは、どんどん希薄になっていっている」
「死を受け入れることが大切なのではない。生まれてきたことを受け入れ、自らを肯定することが、大切なのだ」
「Citation du jour」 より翻訳引用


この「本棚」から想像できる人物をまとめると、文芸に造詣深く、必要とあれば機略縦横。志高く、広い視野を持ち、時には沈思黙考する賢明さを持つ人......でしょうか。
マクロン大統領の任期は2022年までの5年。どんな場面で、どんなふうにその資質を発揮するのか。フランス国内外から、視線が注がれています。
[Business Insider France, Journal des Femmes, LObs]
photo by Getty Images